足の痛みの専門家による足と靴の悩み対処法

足底筋膜炎治療家として日々の仕事で受けた質問や、行ったアドバイス、対処などを紹介するブログ。足底筋膜炎は多種多様で、想像以上に奥深く、根深い。足底筋膜炎に20年以上悩まされた経験から、少しでも同じ悩みの人の役に立ちたいと思っている。

偏平足+足の裏が痛い=足底筋膜炎ではない!

足底筋膜炎という名前が知名度を得てきました。偏平足で足の裏が痛いと、イコール足底筋膜炎と結びついてしまいがちですが、全てがそうとは言い切れません。
では、偏平足で足の裏が痛い人は、足底筋膜炎以外にどんなことが起こりえるのでしょうか?
偏平足や足底筋膜炎などの言葉の解説をしながら、実際の相談を例にお話していきたいと思います。

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偏平足とは

偏平足とは

偏平足とは

最初に、いくつか出てくるキーワードを説明していきましょう。
偏平足という言葉は、ほとんどの人が聞いたことがあって、だいたいどういうことなのかの想像はつくと思います。
簡単にいうと「土踏まずが無くなっている足」ですが、その程度にはある程度の幅があって、とても低いけれど土踏まずと地面に隙間がある状態でも偏平足と言いますし、土踏まずが完全に無く、足裏全体がべったりと接地している状態も偏平足です。

また、偏平足にはその成り立ちにも大きく分けて2つがあります。
一つは、土踏まずが正常に形成されていない足。
これはつまり、歩きはじめから成長に伴って形成されるはずの土踏まずが形成されることなく、ずっと偏平足のままという足です。
もう一つは、一度形成された土踏まずが消失した足。
こちらは、一度は土踏まずが出来上がるけれど、徐々に土踏まずが低くなっていく変形をした足という2つです。


足底筋膜炎とは

足底筋膜炎とは

足底筋膜炎とは

朝起きた初めの1歩や、しばらく座っていた後の歩きはじめが痛いということが特徴の足裏の痛みのある疾患です。
慢性化すると足を着く度に痛くなります。
痛みの出る場所は決まっているわけではなく、画像にあるように色々な場所に痛みが出ます。
また、痛みの出る場所も動くことがあり、初めは土踏まずの中央が痛かった人が、痛みを繰り返しているうちに、踵や指の付け根に移動することが多いです。

 


今回の痛い場所

痛い場所はくるぶしの後ろと足の裏踵の前、内側

痛い場所はくるぶしの後ろと足の裏踵の前、内側

今回の相談者の痛い場所は、画像の通りの2カ所です。
足の裏の他に、内側のくるぶしの後ろ側もあります。
くるぶしの後ろ側の少し下側は常に痛くて、足の裏の、踵の前、内側の部分は、接地した時に激痛が走るという痛みの出方です。
凄く珍しいケースというわけではなく、全く同じタイプの相談は年に何回かありますので、当てはまる人がいるのではないでしょうか。

 


偏平足は接地したらそれ以上悪化しないわけではない

本人の足、土踏まずが完全に設置しても変形が進む偏平足

本人の足、土踏まずが完全に設置しても変形が進む偏平足

最初に偏平足について2タイプあって、1つは足の裏が完全に設置するタイプだとお伝えしました。
イメージとして、足の裏が完全に設置したら、もうそれ以上変形のしようがないだろうと思ってしまいませんか?
ところが、実際には、足はもっと変形します。
もちろん、地面や床に設置するので、特定の病気や事故が無い限り、足の骨が足の裏側に飛び出すということは、通常はありません。
ところが、足の偏平足になる変形は、内側に足が倒れるように変形します。
すると、画像のように、土踏まず部分が内側に出っ張ってくるように変形します。
つまり、このケースの偏平足は、画像のように足裏全面が接地してもさらに変形が進んでしまった足で起こる症例です。

 


踏まれるはずのない組織を踏んでいる足

原因の説明 本来なら足の裏にない組織が変形のせいで足裏に存在している

原因の説明 本来なら足の裏にない組織が変形のせいで足裏に存在している

では、このケースの痛みの原因を説明しましょう。
この足の、足裏の痛みの原因は、後脛骨筋という脛の裏側と足の内側を結んでいる筋肉の腱を踏んづけてしまっていることが原因です。
偏平足が進行し、本来だったら床に押し付けられるはずの無い組織を自分の足が踏んづけているような状況が起こっています。

後脛骨筋というのは、脛の裏側から始まり下へ向かい腱に変わります。
腱は内くるぶしの後ろを通って、内くるぶしで方向を変え、正常な足の場合に土踏まずの一番高くなっている部分の舟状骨という骨と、その周辺に広く付着します。
この筋肉は、土踏まずを引っ張り上げる方向に働くため、偏平足になることで引っ張られると、方向を変える内くるぶしの部分で痛みが出やすいのが特徴で、このケースでも内くるぶしの後下部分に痛みが出ています。

この腱が、本来なら床から離れたところを通るはずなのに、足が強く変形した事によって、足の裏側にきてしまったために、そこに体重が直接乗ってしまうことになりました。
それが足の裏の激痛の原因でした。

 


対処法1インソール

適切なオーダーインソールが有効 店選びは慎重に

適切なオーダーインソールが有効 店選びは慎重に

本来なら体重が乗るはずのない組織に体重が乗ってしまっていることが問題なのですが、足の裏に問題部位が来てしまっていることを変えることは難しいでしょう。

だから、その部分に体重が乗ったとしても、痛みが出ないようにする必要があります。
それを簡単に行えるのは、インソール以外に無いと言っていいでしょう。

条件が特殊なこともあり、この場合のインソールというのは、オーダーメイドインソールです。
中でも条件があって、スポーツ用品店でよく見かけるような、プラスチック樹脂を加熱して加工するセミオーダータイプのインソールは不向きです。
また、もっと固いプラスチック製のオーダーと言ってイベントなどで販売されているタイプも不向きどころか、さらに痛くなるでしょう。
シリコーン系のものも不向きです。
同じ症例で、整形外科で医療保険のインソールを作ったけれど解決しなかったと言って相談に来た方が持っていたインソールがシリコーン系のものでした。
整形外科で医療保険のインソールとして出されるシリコーン系のインソールはほぼ既製品と考えて間違いありません。

EVAなどのスポンジをベースとしたインソールで、問題の個所にストレスがかからないように作ることができるような店でオーダーしましょう。

 


対処法2靴選び

靴底幅広さ、特に踵はしっかりとしている方が良い

靴底幅広さ、特に踵はしっかりとしている方が良い

この靴選びは、インソールのような直接的な対処法ではありません。
インソールと一緒に使う靴の選び方の参考にしてください。
あり得ないと思いますが、もしも靴単体で痛みが無くなったら、それは本当にラッキーです。

偏平足が非常に進行している足では、靴底が細い靴、踵の小さい靴では、足が内側に倒れてしまいやすいです。
内側に倒れるということは、後脛骨筋の引っ張られるストレスが増すので、痛みがより強く出るようになる可能性があります。
後脛骨筋の負担を軽減させる為にも、靴底の幅が広い靴が良いでしょう。
そうすることで、足が、足の形状以上に内側に倒れ込みにくくなります。
インソールを使う場合でも、インソールの下に土台となる靴がしっかりと存在している方がその効果を発揮しやすくなります。

 


避けられない姿勢への影響

足のトラブルは姿勢への影響が常にあります

足のトラブルは姿勢への影響が常にあります

おまけですが、これだけの変形がある場合は当然ですが、軽くても足底筋膜炎で足裏にチクチクと痛みがあるとすると、立ち姿勢や歩き方に必ず影響が出ます。

その影響を体が吸収出来れば、トラブルが起こることはありません。
ところが、体が吸収しなければならない姿勢への影響はこれ1つではないです。
例えば、仕事の姿勢、荷物の持ち方、履いている靴のすり減り方など、日常の立っている間の様々なことの影響を受けます。

そういう影響は積み上げ方式で体に影響を与えます。
この例に限らず、足の痛みを我慢出来ているからまだ何もしなくて良いとお考えの場合、その影響は必ず体に蓄積しますので、なるべく早く専門家や医療機関に相談しましょう。

 


偏平足+足裏の痛み=足底筋膜炎

あらためて書くまでもないかもしれませんが、まとめです。
「偏平足で足の裏に痛みがあっても、足底筋膜炎とは限らない」
ということです。

ネットで調べて、当てはまりそうな症状の対処法をやってみて、それでも解決や改善が見られないなら、専門家や医療機関を受診するようにしましょう。